歯周病とは
歯周病菌の感染により、歯を支える歯ぐき(歯肉)や歯槽骨が壊され、歯が抜け落ちていく病気のことです。
歯周病は大きく分けると2つの状態があり、歯肉炎と歯周炎があります。
歯磨きの習慣、飲食の習慣、喫煙など生活習慣が関係しており、日本人の40歳以上の8割がこの病気にかかっているといわれています。
進行するまで自覚症状がないため、歯科医師による定期的なチェックが必要です。
歯肉炎とは
歯ぐきだけが腫れた状態で、比較的軽度な炎症のことです。
この状態であれば大抵の場合、原因である歯垢・歯石を取り除き、丁寧なブラッシングで改善されます。
しかし、この状態を放置していると症状が悪化し、歯周炎となってしまいます。
歯周炎とは
歯肉炎が悪化し、歯を支える骨まで腫れが広がる状態です。この状態になると歯を失ってしまう可能性が高く、元の状態に戻すのが大変難しくなります。
歯周炎まで症状が進行すると歯ぐきが腫れ、膿が出て、歯がぐらつき抜けることもあります。
歯周病の原因
歯周病の直接的な原因は歯垢(プラーク)です。歯垢は生きた細菌の塊で、酸素の少ない場所を好むため、歯と歯茎のすき間(歯周ポケット)に潜んでいます。
この歯垢内の細菌が出す毒素によって、歯ぐきに炎症を起こすのです。
歯周病菌とは
人の口の中には数百種類もの細菌が住んでいます。口の中の汚れや細菌は唾液によって洗い流されますが、加齢によって唾液の量が少なくなると細菌が定着しやすくなります。
歯周病菌は現在分かっているだけでも約100種類で、その中でもよく見られる歯周病菌はおよそ10種類です。
そのため、歯周病菌は人によって発症の原因や種類が異なり、1種類ではなくいくつかの種類が入り混じっています。
歯周病菌は普段おとなしくしていますが、口の中に残った糖分を利用して、ネバネバした物質を作り出します。
この物質は粘着質で、うがい程度では落ちません。さらに空気を嫌うため、歯ぐきと歯の間の歯周ポケットに入り込み歯垢となり、やがて歯石になるのです。
歯周病の予防方法
歯周病の予防法が原因である歯垢を取り除くことが重要ですが、歯周病は歯と歯の間から進行することが多いのですが、歯ブラシだけでは磨ききれません。
歯ブラシに加えてデンタルフロスや歯間ブラシの使用が必要です。歯周病が進んでいると歯と歯の間が広くなっていることが多いため、この場合は歯間ブラシが有効となります。
いずれの場合も使い方を間違えると歯肉を傷つけたり、退縮させたりするので注意してください。歯科医院でブラッシングの指導を受けることをおすすめします。
歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスを使ってしっかり歯垢を落としていきましょう。
歯磨きのタイミング
食後は口の中の細菌が活動しやすくなっている状態なので、食後すぐの歯磨きが理想的です。
食後すぐに歯を磨くことで歯垢の増殖を防ぎ、酸性に傾いていた口の中を中性に戻します。
そのため、少し時間があいてもかまわないので、できるだけ食後は歯磨きをしましょう。
特に就寝前の歯磨きは最低限でも行うようにしてください。
就寝中は無意識に口呼吸になりやすく、口の中が乾燥して唾液の分泌が減ります。
唾液が減ると歯周病菌が活発化してしまうのです。寝ている間も歯周病菌が活発化しないように、就寝前の歯磨きは必ず行うようにしましょう。
日常生活でできる歯周病予防のポイント
歯周病は細菌による感染症のため、自身の免疫機能が低下すると感染しやすくなります。
歯磨きだけではなく、身体の免疫機能を高め、口の中の環境を整える必要があります。
疲労やストレスをためない
疲労やストレスが溜まると身体の免疫機能が低下します。そこで、疲労やストレスを溜めない生活習慣にしてください。
例えば、ストレス解消には何か趣味や楽しみを見つけるといいですし、疲労回復には入浴や十分な睡眠をとることを心がけましょう。
栄養バランスの取れた食事
免疫の7割は腸で作られるといわれています。よって食事に気を配り、腸内環境を整えるようにしましょう。
免疫力を上げる栄養素としてビタミンA、B、C、E、ミネラル、タンパク質があります。
また、食事の注意点として糖類の摂り方に注意しましょう。
間食はなるべく控える
食事の回数が増えるほど歯垢がたまりやすくなるため、歯周病のリスクが高まります。特にダラダラ食べ続けるのはよくありません。
間食はなるべく控えましょう。
アルコールの取り方に注意する
アルコールを飲んだからといって歯周病になるわけではありません。ですが、アルコールには利尿作用があります。
特に夜寝る前にアルコールを飲む習慣があると、リスクが一層高まります。
歯周病になりやすい人とは
歯周病になりやすい人はどのような生活習慣や歯の特徴があるのでしょうか。
特徴を理解することで歯周病予防の可能性が高まります。
女性は歯周病にかかりやすい
細菌の研究で歯周病の悪化は女性ホルモンの関与が大きいことが分かっています。女性ホルモンには特定の歯周病菌の増殖を促したり、歯周組織の炎症を悪化させる作用があるのです。
女性ホルモンの分泌は時期によって変化します。思春期と妊娠・出産、更年期の大きく3つ。
また、普段の月経周期でホルモンバランスは変化するため、生理前に歯ぐきが腫れたりする人もいます。
女性特有の歯周病のリスクを理解してケアすることが大切です。
歯磨きをあまりしない人
歯磨きをしない、効果的なブラッシングができていない場合、歯垢が付いたままで口の中は細菌だらけになります。
歯垢が残っていると歯ぐきが腫れる歯肉炎が発生し、歯周病のリスクが高まるのです。
歯並びが悪い人
歯並びが悪いと歯が重なっている部分の歯磨きがしづらくなり、歯垢が残ってしまうので注意が必要です。
歯垢は唾液成分と混ざることで歯石になります。歯石となることでその部分に歯周病菌が住み着き歯周病へとつながります。
磨き残しがあるということは、それだけ歯周病を引き起こすリスクが高まるわけです。
喫煙の習慣がある人
喫煙は血管を収縮させて血行不良を引き起こします。また、たばこに含まれる有害物質が歯に付着すると歯垢がつきやすくなります。
そのため、見かけは歯ぐきの腫れは少ないのですが、歯周病菌に対する抵抗力は低下しており、歯周病を重症化してしまうのです。
また、歯周病治療でも喫煙者は治りにくいことが分かっています。
ストレスが多い人
一般的に強いストレスが加わると、自律神経のバランスが崩れて、本来持っている免疫力が低下してしまいます。
また、ストレスを感じると唾液の分泌量が減ってしまいます。唾液は、口の中をキレイに洗い流したり、殺菌したりと様々な機能を持っているのですが、唾液の分泌量が減ると口の中の衛生状態が悪くなり歯周病の原因となるのです。
つまり、ストレスが多いと歯周病が進行しやすくなるわけです。
食事のバランスが悪い
不規則な食生活や栄養バランスが悪いと、身体だけではなく歯や歯ぐきにも悪影響を及ぼします。
また、甘いものや柔らかいものは歯につきやすく、歯垢が増える原因です。
糖尿病の人
糖尿病になると抵抗力や組織の修復力の低下が生じ、歯周病が悪化してしまいます。
高血糖になると唾液の分泌量が減り、口の中が乾いた状態になり、歯周病菌が繁殖しやすくなるためです。
歯周病にかかってしまった場合の治療法
治療では大元の原因である歯垢や歯石を取り除く「歯周基本治療」が主眼に置かれます。
これは自身で行うセルフケアと歯科医院で行うプロフェッショナルケアがセットになって治療が行われます。
歯科医師による歯周基本治療
歯周病が軽度の歯肉炎の段階でも、中等度以上でも共通する治療です。
歯肉炎や軽い歯周病なら汚れ(歯垢・歯石)を取り除くプロフェッショナルケアを主体にした歯周基本治療です。
歯科医院では、歯の表面の歯垢・歯石を機械で取り除くスケーリングを行います。
同時に歯周ポケット内部の歯石や歯根表面の汚染されたセメント質を除去し、歯の根を硬く滑らかにする処置も実施。
これらの基本治療により歯周組織が改善され、歯周ポケットの深さが2~3mmで維持されれば定期検診に移行となります。
歯石除去に使われる器具とは
歯石除去ではスケーラーという器具を使い歯石やプラークを落としていきます。
スケーラーには色々な種類があり手用スケーラー、超音波スケーラーが主に使用され、歯石のつき具合によって使い分けられます。
歯石除去の頻度
歯石除去の頻度は3カ月から半年に1回です。
歯石は丁寧にブラッシングを行っても徐々に蓄積してしまうので、定期的な歯石除去が必要です。
表面は歯石がないように見えても、歯の裏側や歯茎の境目などに歯石が生じていることは珍しくありません。
定期的に歯科医院を受診することが大切です。
重度の歯周病は歯周外科治療
歯肉の奥に詰まった汚れが歯周基本治療では取り除けない場合、歯周外科治療を行います。
歯周外科治療となるのは基本治療では一部の歯周ポケットが改善されず、ポケット内で細菌が生息し、ブラッシングでの除去が難しく、歯周病が進行してしまった状態です。
このような場合、外科的にポケットの深さを減少させる手術があります。
また、特殊な材料を用いて部分的に失った歯を再生させる手術を行う場合も。
治療後の再検査で改善できたら定期的な清掃と検査、改善できていなければ再度治療というように、治るまで根気よく治療と検査が繰り返されます。
まとめ
「歯周病は予防が治療に勝る」と言われています。
歯周病を発症すると、歯が抜け落ちるなどの深刻な問題が発生することがありますが、適切な対策を取ることで予防可能です。
定期的な歯科医院の受診、正しい歯磨きやフロスの使用、健康的な食生活など、日常生活の中でできる予防策がたくさんあります。
今回紹介した予防策を実践し、歯周病の発症を未然に防ぎ、健康な口腔環境を維持しましょう。